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道が決まった。お念土師・大久保汰佳物語の芯 #2

ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳
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理由も名前も、言葉も持たないまま、ただ心が先に動いてた。出会いが、人生の奥深くに静かに根を下ろす。
この大久保汰佳の物語は、仏教を学び始めた瞬間から始まるのではない。志を抱いた日でも、職業を選んだ日でもない、もっと前。
記憶になるかならないかの境界線で、仏さまはすでに「そこにいた」。それは信仰というよりも、日常の風景。
仏さまと共に始まっていた時間を、ひとつずつ語ってもらった。

ima presents「かたる」お念土師・大久保汰佳、第2話お楽しみください。

理屈より先に、仏さまがいた

生まれは長野県長野市、四方を山に囲まれた、善光寺のお膝元。北国街道沿い川中島で、一人っ子、親族は誰もお寺関係の人いないのです。初めて仏さまと触れた瞬間は今でも鮮明に覚えてますよ、物心がつく前にお墓が好きになっていたんです、それが1歳、2歳のなので、何が好きかと聞かれると、形だったのかなっていう曖昧な感じですね。

長野の方はね、新聞折込に石材店のチラシとかがよく入ってるのですよ、今もそうですけど。「金のお仏壇300万円が今なら150万円の半額!」などのようなチラシ広告ですよ。それを見るのが好きで、いつも集めていたのですよ。
あとは、国道や県道のような大き道の脇には、石材店のショールームなどがありますでしょ、そういうのを見ることが好きでしたね。チャイルドシートに乗りながら、眺めていた記憶が鮮明に残っているのですよ。
そうですね、今でも「これがこうであるから好き」というのがないと思うのですよ。理屈ではなく、好きというのは直感なので。

ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳の祈祷
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『日本の仏像』50巻が、人生を決定づけた

その後、母の友人である関さんが、「お墓が好きだったのなら、こういうものも好きなんじゃないかな」と言ってプレゼントしてくれたのが、仏像の本だったのです、3歳くらいの頃のことでしたかね。
表紙は阿修羅で、興福寺の特集号でした。講談社が毎週木曜日に出していた『日本の仏像』シリーズですね、全50巻の。
次の週、さらにその次の週と、新しい号が次々に発売されるので、木曜日になると本屋へ行き『日本の仏像』を買う、それが、幼稚園のわたしのルーティンでしたね。

最初は、すべてを揃えていたわけではなく、飛ばし飛ばしで購入してましたね。けど30巻あたりからは、毎週欠かさず購入するようになりましたよ。どうしても手に入らない号がいくつかあって、例えば「空也上人」の第17巻『六波羅蜜寺――空也上人像と東山』とかは、日本中で大人気となり、どこへ行っても見つからなかったんですよ。結局、本社に直接問い合わせて送ってもらった記憶があります。そんな風に、手に入れられなかった巻は取り寄せて、最終的には全50巻を揃えましたよ。

この『日本の仏像』シリーズは、今でもわたしにとってのバイブルなのです。日本で押さえるべき主要な仏像は、この50巻の中に網羅されていて、すべて読み込んだことで、掲載されていた仏像の知識は、今もすべて頭の中に残っていますよ。

今のわたしの仏像観を形づくっている最も大きな土台は、間違いなくここにありますね。
幼稚園の頃に刷り込まれた知識が、形を変えることなく、今も生き続けているのですよ。振り返ると、本当に絶妙なタイミングで『日本の仏像』が世に出てくれたと思ってます(笑)。

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生涯忘れることのできない室生寺での瞬間

並行して、長野市近郊の善光寺をはじめ、鎌倉近辺などの寺院へ、仏像を見に行く機会も自然と増えてましたね。中でもお気に入りだったのが、神奈川の弘明寺ですね。
ただ次第に、「この仏像が見たい」という明確な憧れが生まれていったのですよ。その多くが奈良の仏像でしたね。理由は単純で『日本の仏像』に掲載されている仏像の大半が、奈良や京都にあったからです。
とりわけ強烈に心を掴まれたのが『日本の仏像』第7巻で出会った、奈良・室生寺の十一面観音でした。ページを開いた瞬間、「これだ」と直感的に思ったのです。その姿は、幼いながらもはっきりと心に刻まれるほどの衝撃でしたね。

そして、年中の5歳のとき、親族の結婚式が奈良・橿原で行われることになったのですよ、祖父母も含めた家族総出で奈良を訪れることになってね、これが、私にとって初めての奈良でした。もちろん合間に室生寺へ行きましたよ。
室生寺の十一面観音に初めてお参りした瞬間、真っ先に胸に込み上げてきたのは「やっと会えた」という思いでした。それはそれは、生涯忘れることのできない、ときめきの瞬間でしたよ。

室生寺の十一面観音との出会いをきっかけにね、十一面観音そのものに強く惹かれるようになったのです。地元で十一面観音が祀られている場所はどこにあるのかを親に尋ねて、長野の長谷寺の観音さまが有名だと知り、実際に足を運んだりしました。そのときに接した住職さんは、今でも私が最も信頼し、長く付き合い続けている存在なのですよ。友人であり、先生でもあります。その出会いを通して、私は初めて「お坊さん」や「お寺」という世界を、身近なものとして知りました。

ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳、室生寺山門
ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳、室生寺金堂
ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳、室生寺五重塔
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お念土師の原風景

この頃から、仏像も粘土で作り始めてましたね、きっかけは分からないのですよ、ただ、自然と作っていた感じです。
仏像を作り始める前から、仏像のスケッチをひたすら描いていたので、そのことが、最初の仏像を造ることにつながったのだと思いますね。初めて作ったのは、十一面観音と不動明王です。

また、スケッチした仏さまを皆さんにお披露目して解説することもしてましたね、あとは祈祷も幼稚園の頃から行ってましたよ。「見る、描く、作る、語る、祈る」これらを自然に行っていた、幼稚園児でしたね。

ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳の仏像作り
ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳の十一面観音
ima「かたる」第2話お念土師・大久保汰佳の祈祷
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執筆者のひとこと
第2話「道が決まった。お念土師・大久保汰佳物語の芯 #2」をご覧くださり、ありがとうございました。

「理屈より先に、仏さまがいた」この一言に、タイガくんのすべてが詰まっているように感じた。
あの頃の日常が、どれも言葉になる前の“感応”として、心に焼きついているんだと。「ただ好き」という感情が、今も変わらずタイガくんの中にあって、理由を求めず、形を通じて祈りを感じる。
お念土師・大久保汰佳の原点を覗けた気がした。感無量です。

次回、第3話のタイガくんもお楽しみに。

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